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生態学会福岡大会から 1.絶滅危惧種の再導入とその問題点

参照:日本生態学会


  佐渡へ中国産のトキを再導入するのは、生態学的に考えて妥当なのだろうか?



今回の生態学会の大会に先だって、昨年、企画シンポジウムの
企画案が募集されたので、

  外来生物を駆除(排除)する行為が、
   すでにその外来生物に依存して生活している
   在来生物などに対して与える影響

      や

  絶滅危惧種を保全するために
   その生物種を植栽や放逐等によって
   再導入する行為が、
   その他の生物に与える影響

について、議論し、これらの行為を行う場合の
ガイドラインについて考えるシンポジウムを開催できないか
という提案をしていた。

提案した時点では、具体的な演者の案があったわけではないので、
他にそのような企画をして下さる方がいればそれでいいと思っていた。

私の提案は今回は採用されなかったが、
幸い、類似したテーマを扱う2つの企画シンポジウムが行われた。

シンポジウム S03
 外来生物法の光と陰~制定5年後の見直しに向けて

シンポジウム S09
 野生動物再導入計画の現状と課題

日程の関係で、外来生物のシンポの方は参加できなかったが、
野生動物の再導入のシンポには参加し、自分の意見も述べてきたので、
紹介したい。

このシンポジウムでは、以下の講演が行われた。

[S09-1] コウノトリの再導入 ー現状と課題ー 池田啓(兵庫県立コウノトリの郷公園)

[S09-2] 韓国におけるツキノワグマの再導入 韓尚勳(Wildlife Institute of Korea)

[S09-3] トキの再導入 ー中国の取り組みと日本の現状ー 山岸哲((財)山階鳥類研究所)

[S09-4] ヤンバルクイナの現状 尾崎清明((財)山階鳥類研究所)

[S09-5] 国としての再導入計画の位置づけ 西山理行(環境省・自然環境局・野生生物課)

中でも、私が関心をもっていたのは、
佐渡島で飼育されている「中国産のトキ」を野外へ再導入することが、
生態学的、生物学的に妥当なものなのか、ということだった。

自分自身では

 ・日本のトキは野生絶滅してしまい、飼育されていた日本産のトキもすべて死んでしまった。
 ・今回の計画は、日本産のトキの子孫を再導入するものではない。
 ・中国産のトキは、地理的な距離、およびトキの行動から推測すると、
  遺伝的に日本にいたトキと同じものではない可能性が高い。
 ・もし、遺伝的に異なる集団であるならば、中国産のトキを佐渡に放す行為は、
  外来生物を放す行為と同じになってしまうのではないか。
 ・中国産のトキを佐渡に放すという行為は、生態学的に考えて妥当なものなのだろうか。

という疑問を抱いていた。一方で、

 ・佐渡の人たちがトキの復活を願っているらしい。
    ただし、すべての住民が望んでいるわけではなく、
    トキが増えると水田を荒らされるといったことを
    心配している人もいるらしい。
 ・トキの復活を願う理由(動機)は、人によって多少違うらしい。
    トキが好きだから、トキも棲める環境を復活させたい、
    トキを町おこしに使いたい etc.
 ・日本のトキは絶滅してしまっているので、
    中国産のトキを放鳥しても、在来のトキとの交雑の心配はない。
 ・放鳥したトキが、増えて周辺に分散していったとしても
    トキが増えたことによって他の在来生物に悪影響を与えるとは
      思 え な い (考 え に く い)。
 ・昔、決まったことで、今更、佐渡の人に、トキの復活はできません
  と言うことはできない。

などの事情があることも理解はしているので、

 佐 渡 の ト キ に 限 っ て は、 後 戻 り で き な い

のだろうと考えていた。それでも、ここで十分議論をしておかないと、
いずれ、「第二、第三のトキ」が出てくるに違いない。

コメンテーターの鷲谷いづみさんは、

 ・中国産のトキと日本産のトキの遺伝的分化は小さいと思われる。
 ・トキのような動物はフラッグシップとして重要であって、
  トキの再導入によって、トキのみならず、トキが生息できる環境も
  保全される。

といった理由をあげられて、トキの再導入には賛成の意見を述べられた。

しかし、演者の山岸哲さんによれば、

 ・中国産のトキは、季節的に小規模な移動は行うことが確認されているものの、
  大規模な移動は今のところ確認されていない。
 ・中国産のトキと、日本産のトキの遺伝的分化については
  ミトコンドリアDNAの一部の遺伝子には差がないことがわかっているが、
  核ゲノムは調べられていないので、差がある可能性は否定できない。

ということだったので、鷲谷さんの意見は説得力に欠けるように思う。

詳細はここで書けないが、やはり

 「昔決まってしまったことなので、後戻りできない」

というのが本当のところらしい。

しかし、やはりそれでは困るので、

 ・日本生態学会で、ガイドラインを作って欲しい

という意見を述べておいた。

会場から、特に異論は出なかったので、
今後、適当な委員会で検討されることになると思う。


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